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DUNE part2

デューン 砂の惑星 パート2
2024年 アメリカ
監督/脚本/製作 ドゥニ・ヴィルヌーブ
出演:ティモシー・シャラメ、ゼンデイヤ、レベッカ・ファーガソン、ジョシュ・ブローリン、オースティン・バトラー、フローレンス・ピュー、デイヴ・バティスタ、クリストファー・ウォーケン、レア・セドゥ、ステラン・スカラスゲールド、シャーロット・ランプリング、ハビエル・バルデム他

乾燥した砂漠の空気と、風紋、全てが砂に覆われ音も吸い込まれていく感じ、灼熱と陽の当たらない日陰の静かな冷え。
そこに理不尽な暴力、支配に関する闘争、捻れて見えにくい意志、諦める事で手にする強大な力を大音量で、しかし静かに描く。

この監督の作品はどれも言葉が少なく、説明が無いと分からない事もわざと説明はしない。
映像それ自体はどんなシーンも細部に至るまで美しく、情感に訴えるのだが、単純なカタルシスを与える事をひたすら避ける。
持っていきようのない気分が結構残る。
今回もパート2であるから、前作の続きなのだが、スカッとする、とか、ワクワクする、とか、感動する、とかそういう感じの映画を見たい向きにはピンとこない可能性が高い。
映像・音響は圧倒的で、長大で、キャスト、セット何もかもが豪勢である。
にもかかわらず、だ。

「砂の惑星」に関する過去の映像化の取り組みを鑑みるに、『これこそが、「砂の惑星」の映画化である。』と完結した暁には、評されることになるのだろう。

映画館を出ると、空は遠くの砂漠から飛んできた汚染物質を含む砂で真っ白に霞んでいた。
まったく、喉が渇く眺めだ。


# by sheknows | 2024-04-18 10:06 | 映画

OPPENHEIMER

オッペンハイマー
2023年 アメリカ
監督/脚本/製作 クリストファー・ノーラン
撮影 ホイテ・ヴァン・ホイテマ
出演 キリアン・マーフィー、エミリー・ブラント、マット・デイモン、ロバート・ダウニー・Jr、フローレンス・ピュー…ゲイリー・オールドマン

登場人物が多い。
時系列通りには流れない。
結論を明確に提示する事はない。
映画の初めの辺りの何気なさそうなシーンが意味深に感じる。
人物描写が複雑。
重量/重厚/長大。
どこを切っても味が濃い。

この監督のいつもの感じではあるが、見慣れた感じでは全くないのが、凄いところだ。
クリストファー・ノーランの監督作品は、かなりどっしりしていて、不思議な描き方をしていても、主題となっているのは人間だ。
単一的でない描き方が陰影・奥行きを作りだし、シーンや表情の一つ一つが何かに、どこかに導かれるかと思いきや急激に拡散する。

配役が絶妙で贅沢。高度で難解な事に対峙している役に明らかにフィットしない配役が無いというのが凄い事だ。
ロバート・ダウニー・Jrがとても良かった。しかし、最高なのは、ゲイリー・オールドマンの、あの、捨て台詞!

映画館で観るのを、出来れば音響設備の整った方で観るのをお勧めします。

オッペンハイマーと「1,000分の1インチの精度で噛み合う歯車を持った完璧な機械」フォン・ノイマンに興味を持ち、評伝を読んだのはポッドキャストのResearchat.fmがきっかけだった。
フォン・ノイマンの映画無いかな。…ある、あるよ、「博士の異常な愛情」だった。



# by sheknows | 2024-04-15 09:36 | 映画

岐阜県博物館

岐阜県博物館に行く

暇を持て余し博物館遠征をすることにした。
鉱物に関する特別展をやっているとの事で岐阜県博物館へ。

何か不思議な作りの建物(2つの建物が連絡通路で繋がっていて、出入り口機能を持たされている棟と展示があれこれある本館に分かれている)のはおそらく、地形の具合でこうなったんだろう。
ともかく古い感じがあちこちに漂っており、雨漏りしているし、剥製やジオラマもちゃんとしたものだが何せ古い感じ。図書室の本も良い本がちゃんと揃っているが、古い。

だが、展示内容は面白い。
常設展示充実している。
解説もありきたりでなくて、良い。

人が全然いなくて、料金もべらぼうに安く(最近の美術館だと5回以上入場できてしまう)多分昔は煌めいていたのだろう、今も中の人は頑張っているのだろう雰囲気だった。漫然と入館して2、3時間楽しんでしまった。
晴れの日だったら周辺の散策路も整備されているようなのでおそらく半日、いや下手すると一日楽しんでしまえる。

博物館エンジョイ勢には最高です。

# by sheknows | 2024-03-13 12:44 | 旅行

The Murderbot Diaries

マーダーボット・ダイアリー
マーサ・ウェルズ著 中原尚哉訳
上下巻 創元SF文庫

あまりにマスクで顔を覆う事に慣れてしまい、気がつくと
独り言を躊躇なく呟くようになり
そしてそれは大体が毒々しいもので
まあ、聞こえてないだろう、と見積もっていると
ギョッとした顔で振り向かれたりして
こっちがギョッとする。

それだけではなく、マスクで表情を隠す事が標準化してしまったので、
逆に、顔面で何か感情のようなものを表現する事が著しく減少した。
元々は、やや分かりやすすぎる表情をどうしたら隠せるのだろうかと思案したものだが
マスクは、物理的に隠せばいい、というある意味での最適解なのだ。
そして、その安らぎと定まった感じは、これこそが、安定だ、と思える。

そういうわけで、人間との接触が苦手でヘルメットを被りたがるこのマーダーボットは、
他人ではない。
ことあるごとに自分の好きな番組の視聴に逃避する様子や
何かにつけて悲観的かつ僻みっぽい客観的なように見えるコメントを発する様子も
他人ではない。
どうしても、囚われている事があるのに、それを頑として認めない様子も
他人ではない。

そうなると、もう感情移入するしかない。
だがしかし、マーダーボットに感情移入とは?

薄暗い窓から見える2両編成の電車と明け方に見えたアンタレスと共に。


# by sheknows | 2024-03-08 12:40 |

Q : A Night At The kabuki

作/演出 野田秀樹
出演 松たか子 上川隆也 広瀬すず 志尊淳 橋本さとし 小松和重 伊勢佳世 羽野晶紀 野田秀樹 竹中直人

松たか子って、上手いんだな。声が良い。
そして上川隆也。良い。

前から3列目の見切れる席で首が痛い、と思っていたが
途中から、そんなことはどうでも良くなった。

理屈でない、何かが押し寄せてくる。
感情ではない。
名状し難い何か。

あ、開いてしまったなあ。

クィーンの曲を使うって、どういう事なのか全然分かっていなかった。
ロミオとジュリエットを下敷きにするってどういう事か予測できなかった。

使い古された表現しか出来ない自分が呪わしい。
圧倒的で暴力的なまでのイマジネーション。
明確に示さないのに、強く作用する。

野田秀樹作品の弱点は、誰かが言っていたけど、野田秀樹が演出したもの以外はカスって事。
真似がもう決定的に出来ない。

すごいものを観た。

# by sheknows | 2019-10-27 21:54 | 舞台

興味のあることが次々に