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L'HOMME DU TRAIN

列車に乗った男
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監督:パトリス・ルコント
出演:ジャン・ロシュフォール、ジョニー・アリディ
2002年 フランス・ドイツ・イギリス・スイス

隣の芝は青い。
ああ、もし、我が輩がかの人であったなら、と夢想する。
例えば、
我が輩は、凄腕のスパイで、
洗脳、銃撃戦、カーチェイスをくぐり抜ける毎日を送る。
若しくは、
我が輩の歌声と美貌に誰しもが酔いしれ、
熱い視線を集める日々。
それとも、
静かでへんぴな山寺で、
修行三昧、読書三昧の日々。

自らとかけ離れた日常への憧れ。

フランスの田舎の生まれた家から離れず、
フランス語教師の仕事からも引退して今は変化の無い生活を送る男。
片や、
流転の日々を滲ませ、衰えと疲れの皺を刻む男。
二人は対照的であるが故に、
そしてまた、それぞれが、終焉を予感しているが故に、
互いに憧れを持ち、「彼のように、生きてみたい」と思わせる。
しかし、静かな時間は早く流れ去る…。

パトリス・ルコント作品の常連、ジャン・ロシュフォール。この人は飄々とした表情で哀しみを表現する。
ジョニー・アリディはフレンチ・ロックの雄(…らしい。知らなかったが)。声が、いいのである。そしてまた、時に和らぐ鋭い視線も。

男の妄想を描くにかけては天下一品のパトリス・ルコント。
彼の過去の作品の破片が埋め込まれ、
パスカル・エスティーヴによる音楽も効果的。

列車に乗って、出かけよう。
行き先は、
秘密だ。
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by sheknows | 2005-10-30 23:31

BEFORE NIGHT FALLS

夜になるまえに
監督:ジュリアン・シュナーベル
出演:ハビエル・バルデム、オリヴィエ・マルティネス、アンドレア・ディ・ステファノ、ジョニー・デップ、ショーン・ペン、マイケル・ウィンコット
2000年 アメリカ

人を突き動かす「革命」「反乱軍」の風向きや銃口はいつしか、こちらに向いていた。
キューバ革命の最中に、作家レイナルドは弾圧を受ける。
作家である、という事で。
そしてまた、ゲイである、という事で。

自分が語る事以外を、人々が知る事を禁じるようになるものなのだろうか。
自分が思う事以外を、人々が思ったり、感じたりする事を、禁じるようになるものなのだろうか。
自分の価値判断以外を、認めなくなるものなのだろうか。
そんな風に「統一」する事など、出来はしないのに。

自らを保つという事自体が、自分の命すら危険に晒す、
どこにも居場所の無いままに、望まぬ彷徨を続ける。
それでも消耗しなかった才能が終わったのは、
NYだった。

ハビエル・バルデムはこの演技でヴェネチア映画祭の主演男優賞を受賞。

にしても、ジュリアン・シュナーベル監督、それぞれのシーンが「絵になる」訳だ。
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by sheknows | 2005-10-28 23:40

THE MAN WHO CRIED

耳に残るは君の歌声c0032580_20285154.jpg
監督:サリー・ポッター
出演:クリスティーナ・リッチ、ジョニー・デップ、ケイト・ブランシェット、ジョン・タトゥーロ
2000年 イギリス・フランス

ロシア・ユダヤの少女フィゲレは、アメリカへ出稼ぎに行く父親と別れた。
その直後、幼い身でイギリスへ。
コーラスガールとなってパリへ。
父親を捜しにアメリカへ渡る事を夢見る彼女と出会う
美貌のダンサー、
イタリア人オペラ歌手、
寡黙なジプシー。

タラフ・ドゥ・ハイドゥークス、クロノス・クァルテット、ラベック姉妹などを豪奢にフューチャーした台詞の少ない、音楽の聞こえるフィルムである。
撮影はサッシャ・ヴィエルニー。余韻の残る映像美、この人のカメラには、胸が張り裂けそうになる。素晴らしい。

こうして掬い取られると、
埋めているものが未だ自分の中で息をしている事を知る。
感傷的で、情緒的。
何とも解説しようのない感情。

曖昧で、感覚的なのが持ち味のこのフィルムを
堪能する人の方が恐らくは、少数派。
しかし、小生にとっては、
年数の経った良いワインのような存在のフィルムであります。
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by sheknows | 2005-10-26 03:30

THE LIFE AQUATIC

ライフ・アクアティック
監督:ウェス・アンダーソン
出演:ビル・マーレー、オーソン・ウィルソン、ケイト・ブランシェット、アンジェリカ・ヒューストン、ウィレム・デフォー、ジェフ・ゴールドブラム、マイケル・ガンボン、バッド・コート、セウ・ジョルジ
2004年 アメリカ

中年の危機。
偉業や栄光のシーズンは過ぎ去り、
ここの所、笑われる事はあっても拍手喝采には縁遠い。
妻とはろくに会話も成立せず、
「事務的」なやり取りに終始する。
チームの親友はジャガーザメに喰い殺された。
傲慢で謝らない、我侭でひねくれ者のズィスーは
世界的な海洋探検家。
親友の敵を討つため、
パワー全開で最後の航海に出る。

キャストの妙。とても豪華なキャストなのに、誰もがいつもと違う雰囲気を漂わせて、緩く、楽しい。ウィレム・デフォー…。お〜う。
色使いの妙。海の生物や衣装や船内、軽くて変で、統一されていて面白い。
音楽の妙。デヴィッド・ボウイのLife on Mars?なんかが突如流れる。セウ・ジョルジの弾き語りによるカバーがよろしい。

「変な間合い」の展開は、
ラフに見えても非常に緻密でないと成功しない。
で、このフィルムは、成功例。
船の縦切りセットなんて、舞台劇を観ているようでとても面白かった。

さ、チーム・ズィスーと共に、
「ちょっとドライブに」参りましょうか。ワインを持ってね。
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by sheknows | 2005-10-25 15:29

Arsène Lupin

ルパン
監督:ジャン=ポール・サロメ
出演:ロマン・デュリス、クリスティン=スコット・トーマス、パスカル・グレゴリー、エヴァ・グリーン
2004年 フランス
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美しいタイトルバック。
カルティエによる宝石の数々。
魅せられる輝き、煌めき。
装飾品、宝石に興味の無い我が輩も
その圧倒的な妖しさに、息をのむ。
あのイエローダイアモンドのイヤリング
あああ、その王妃の首飾り…
危険である。
こんなものを直に眼にすることのない我が輩は幸福なのだ、と知る。

知らぬ人のおらぬ怪盗ルパンの映画化なれど、これは
父子の葛藤
宝石の魔力
純真な愛の力
を「アクション、スリル、スピード」で描くのみにあらず。

このフィルムで観るのはクリスティン=スコット・トーマスだ。
彼女の魔女・悪女ぶりの天晴れな事!!
美しく強靭で狡猾な女の迫力。
「怖い」女の、素直になんぞは決してなれない恋。
カリオストロ伯爵夫人の視線の強さに撃たれては
ルパンならずとも太刀打ち出来ない。

男前すぎない、どちらかというと三枚目な外見のロマン・デュリスがルパンの軽み、スマートさ、一途さを巧く出している。

宝石と並んでピエール=ジャン・ラロックによる衣装も見事である。
「ルーブルの怪人」のジャン=ポール・サロメ監督。

今宵は、シャンペン片手に華麗な悪女に酔うのもまた一興。
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by sheknows | 2005-10-23 14:31

金沢21世紀美術館

21st Cencury Museum of Contemporary Art, Kanazawa
古都金沢に一年前に出来た金沢21世紀美術館。
兼六園を斜め向かいに望んでロケーション良し、
白い円形の外観、中はガラスで区切られた不思議な造りの美術館。
どこもかしこも絵になる風景である。
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その中でロッキングチェアにゆらりゆらりとゆられたり、
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切り取った空を眺めてたゆたい、佇んでいると、
凝った肩がほぐれるように、
日常からほぐれる感じがする。
あなたの日常が堪え難い程息苦しい訳ではなくても。

例えばこんな地下道を通ってたどりつく作品がある。
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中に入ると、プールの底。
水中でも息が出来る魔法の丸薬を飲んだかのような不思議な感覚。

外からみるとこんな感じ。
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ライブラリーもカフェもあり、スペースにゆとりがあって良いのだが、
ミュージアムツアーのガイドさんが妙に沢山いて、
その説明を聞きたくないのに聞こえて来る程、結構大きな声であるのと、公式サイトが今ひとつ。とケチをつけるのも忘れない。

夕暮れや雨の日や雪の日、また違う雰囲気で楽しめるに違いない。
一度ならず訪れたくなる、素敵な美術館。
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by sheknows | 2005-10-21 01:58 | 美術

THE GETAWAY

ゲッタウェイc0032580_1181940.jpg
監督:サム・ペキンパー
出演:スティーブ・マックィーン、アリ・マッグロー、アル・レッティエリ、ベン・ジョンソン
1972年 アメリカ

運転免許の更新に行くと、事故の生々しい映像を見せられる。
それを観ていると、どんどん恐ろしくなって来る。
当たり前のように鉄の塊を高速で走らせている事が。

事故に遭わずに過ごしていられるのは単なる偶然なのだ。
と、しつこくナレーションされ、
妙に刷り込まれてしまう。
そういえば、教習所に通っていたときも、
散々こういうのを観たな、と思い出す。
免許取り立ての頃は、運転も下手でおっかなびっくり。
右折がとても嫌だった。
今も大した運転テクニックは無いし、
カーチェイスは映画だけの楽しみとしておく事にする。
助手席に乗るのも、出来れば遠慮したい。

このフィルム撮影時、アリ・マッグローは車を運転した事が無かった。いくらスティーブ・マックィーンに教えてもらえたと言っても、カーチェイスをいきなり執り行うのは大変な事だったろうと思われる。おまけに、サム・ペキンパー監督作品である。さぞかし、大変な事だったろう。
可憐な容姿のアリ・マッグローが度胸の据わった銀行強盗の妻。
スティーブ・マックィーンが出所したての銀行強盗。黒いスーツに黒いネクタイ。多分何から何までこだわったのであろう役作り。
スローモーションを多用し、真っ赤な血が流れるサム・ペキンパーのフィルム。
嗚呼!
当時のハリウッドでは珍しい順撮りでの撮影。
刑務所も囚人も国境の検問所も本物。
何度も観るのに耐えるフィルムである。

チリコンカンでもツマミにして、
バーボンを飲みながら。
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by sheknows | 2005-10-19 01:20

SPY BOUND

スパイ・バウンド
監督・脚本: フレデリック・シェンデルフェール
出演: ヴァンサン・カッセル、モニカ・ベルッチ、アンドレ・デュソリエ、シャルル・ベルリング
2004年 フランス

フランス情報機関DGSEってのは、一体何と読むのだろう?
ふむ?
デグスィ?
…ちゃうわ、ちゃうちゃう。ぜえったいにちゃう。
なんか、こう、…スパイ組織と云えば、
冷酷で
切れ者で
機転が利いて
目立たず
実行能力に溢れて
カーチェイスも出来れば
重火器取り扱いも出来る、
「自分の人生」などというものが無い
恐るべき人々の集団なのだ。
ヴァンサン・カッセルがインタヴューでポロリと述べたように、「国家にやとわれたテロリスト」的側面を持つ。
それゆえ、雇い主の都合で、使い捨てられてしまう危険も常にある。

これは、ヨーロッパを舞台に暗躍するスパイの実生活をかいま見せるような台詞の少なさで見せるフィルム。1985年に実際に起きた『虹の戦士号』爆破事件の犯人の証言を元にした脚本。ほとんど会話が無いのと脈絡がズルズルと動くのが妙に生々しい。但し、アクションとか筋のキレの良さを期待してはいかん、これはフレンチだ。

モニカ・ベルッチが華やかでなくて、艶やかでなくて、地味なのだが、良い。
ヴァンサン・カッセル、こういう癖のある顔の人は何故か好きである。

ワインと洋梨・ブルーチーズを傍らに置いて。
え?!ここで終わるの?
と思っても、ちょっと酔っぱらっているから、「ま、いっか」、と思えるしね。
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by sheknows | 2005-10-17 22:46

ALL THE KING'S MEN

オール・ザ・キングスメン
製作・監督・脚本:ロバート・ロッセン
出演:ジョン・アイアランド、ブロデリック・クロフォード、アン・シーモア、マーセデス・マッケンブリッジ
1949年 アメリカ

ピュリッツァー賞受賞のアメリカ地方政治における腐敗を描いた小説が原作の映画化。当時日本では公開されず、1976年、随分経ってからの公開となった作品。

アメリカの地方で農民を味方につけ、政治の浄化を訴え理想に燃え、やがて州知事に当選した男ウィリー・スタークが、たどる汚職・収賄・恐喝への道。彼の政治家としてのスタートから新聞記者として立ち会い、やがて側近になった男の眼を通して見る。

権力と腐敗は良く知られているように、セットでやって来る。
高い所に自分が登ったような気がする、
泥の中まで見通せるような気がする、
跪かれて当然のような気がする、
自分の意に沿わない事をいう人間を遠ざけ、
蹴り落とす。
反対方向に動こうとする者を
丸め込んで、
捨ててしまう。

自分が全ての判断基準、と言い切る男の発する衆愚政治。
あまりに身近すぎて、
あまりに慣れすぎて、
違和感を感じる事すら出来ない。
身の内に飼う蛇、なのだろうか。
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by sheknows | 2005-10-16 23:11

AMERICAN GIGOLO

アメリカン・ジゴロ
監督・脚本:ポール・シュレーダー
出演:リチャード・ギア、ローレン・ハットン、ニーナ・ヴァン・パラント
1980年 アメリカ

ビバリーヒルズに住み、黒いベンツのオープンカーに乗る「高級」ジゴロ:ジュリアン。満たされないものを内面に感じつつ、今日も金持ちの熟女をエスコート。
そんなある日、ジュリアンは上院議員夫人と偶然に出会う。
同時に、殺人事件に巻き込まれ刑事に付きまとわれる日々が始まるのだった。

リチャード・ギアは小生の苦手な俳優の一人。彼の何がいいのかよく分かっていない。それなのに、借りて来てしまったのは、「魔が差した」、としか思えない。…あ〜。

観るべきは男の嫉妬。
裏切り、
蹴落とし、
叩き込む、
用意周到な罠。

願わくば、そんなものに引っかかる事無く飄々と社会生活を送って行きたいものです。

我が輩が、罠を用意する事が無いのかって?
多分、すぐにバレてしまい墓穴を掘るだけなので、そういう不埒な企みは能力的に無理ですね、ふぉっふぉっふぉ。
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by sheknows | 2005-10-15 22:55


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