■NIL BY MOUTH■

ニル・バイ・マウス
`97 イギリス 120分

1997年カンヌ国際映画祭主演女優賞受賞
1997年エジンバラ国際映画祭最優秀監督賞受賞
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監督・脚本 ゲイリー・オールドマン
製作 リュック・ベッソン,ダグラス・アーバンスキー,ゲイリー・オールドマン
撮影 ロン・フォルチュナート
編集 ブラッド・フラー
オリジナル音楽 エリック・クラプトン
美術 ルアンナ・ハンソン
衣裳 バーバラ・キッド

出演 レイ・ウィンストン,キャシー・バーク,チャーリー・クリード・マイルズ,ライラ・モース,エドナ・ドール,クリシー・コッテリル,ジョン・モリソン,ジェイミー・フォアマン,スティーヴ・スウィーニー

カウンシル・フラットの連なるサウスロンドンのデプトフット。レイは失業中でパブに入り浸たり,アルコールとドラッグにどっぷり浸かっている毎日。義弟のビリーはドラッグ中毒で,母親の稼いだ金で怪しげな売人からドラッグを買っては,打っている。
暴力的なレイは妊娠中の妻ヴァルをささいな事がきっかけで殴り,蹴り,流産させてしまう。限界を感じたヴァルは,姉弟をじっと見守る母ジャネットのいる実家に帰り,家中を滅茶苦茶にしてしまったレイの元に戻るのを拒んでいた。
そんな中で自分の父親の事をポツポツと語り,ヴァルに対する愛を確認したレイはヴァルを迎えに行き,許しを乞うのだった。

痛い映画である。
四文字言葉が飛び交い,アルコールとドラッグと暴力にあふれている。そしてアルコールやドラッグは「クール」ではない,暴力は痛いのだ,と日頃それらに対するスタイリッシュな演出を見慣れた目に突きつける。
社会の底辺にたむろする人々の「愛されたい」「誰かの助けが欲しい」という願いは,アル中で暴力的なレイは,アル中で暴力的な父親に育てられ,またそれをじっと見つめる娘はそういう男と結婚していく…というリングの中で,決して叶えられることはない。
けれど,そうした中で発見するバイタリティやユーモア,家族への愛情の体温が伝わってくる。果てしなく描かれるリングの中の痛切なラブ・ストーリーでもある。

7才の時に出ていったきり,会うことなく亡くなった彼の父親に捧げられているこの映画のためにゲイリー・オールドマンは彼自身,長年つきあってきた「アルコール中毒」と決別した。自らの記憶,想いを込めた「家族の肖像」は,しかし,ノスタルジーの漂うものではなく,あえて感情を排したカメラを通して描かれる。
このリアルな姿を出すために,リハーサルを繰り返した。カンヌ主演女優賞のキャシー・バークは「まるで舞台劇に出るようだった。役をふくらませる時間が十分にあったから。」と語る。

音楽はエリック・クラプトンがオリジナルを提供している。初めてこの映画を観た時は激しく動揺し,自分の過去の傷に触れられたようで腹が立ったが,次第に登場人物に感情移入しこの映画で描かれる感情や思いやり,ユーモアを理解した。そうして作られたブルースがこの作品を彩っている。

ライラ・モースはゲイリー・オールドマンの実の姉。演技の経験は無いらしいが、見事なものである。

何度も言うようだが、痛い映画である。そして重い。だが、是非。c0032580_18411435.jpg
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by sheknows | 2005-01-14 18:16 | 映画

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